Vol.16
編曲家という仕事 ~男性アイドルの楽曲を中心に辿る船山基紀の世界~
- 出演者
- 船山基紀 ゲスト:西寺郷太(NONA REEVES) 司会:田渕 浩久
- 日程・時間
-
2019年1月27日(日)
OPEN 12時00分
START 12時30分
- 開催場所
- 三軒茶屋 GRAPEFRUIT MOON
- 住所
- 東京都世田谷区太子堂2-8-12 佐々木ビルB1
ケモノディスクライブ vol.16はvol.12に続き2度目のトークイベントとなりました。今回のメインゲストは日本を代表する編曲家・船山基紀さん。子供の頃オメガトライブや少年隊が大好きだった私にとって、船山さんは特別な存在の音楽家です。そして、もう一人ゲストとしてお招きしたノーナ・リーヴスの西寺郷太さんも、子供の頃から船山さんを敬愛されているのを知っていたので、いつの日かお二人を招いてイベントをやってみたいと思っていました。そして、今回の司会・田渕浩久さんの著書「ニッポンの編曲家」を読んだことも、イベントを開催するきっかけとなりました。いろんな縁が繋がり今回のイベントを開催することができ、関わっていただいた方々に本当に感謝しています。
お二人のプロフィール紹介後、少年隊「FUNKY FLUSHIN’」で船山さんと郷太さんが入場。満員の会場からの熱気の中、「編曲家の仕事って何?」という話からスタートし、船山さんが80年代に使用していた機材の話に。1983年頃、デジタル・シンセサイザー「フェアライト CMI」を約1,500万円で購入しましたが、日本で数人しかいない時期での購入だったとのこと。フェアライトで船山さんが打ち込み、あとの2人がRoland MC-4というデジタル・シーケンサーで打ち込む3人体制で音楽制作を行っていました。MC-4は静電気にとても弱く、一晩かけて打ち込んだものが一瞬で飛んでしまうこともあったそうです。また、船山さんは編曲される時、ピアノを弾きながらではなく頭の中で鳴るフレーズを直接譜面に書き記すということで、そのエピソードからも船山さんの天才ぶりが垣間見えました。
ジャニーズでの最初の仕事は、川崎麻世さんが歌った宇宙戦艦ヤマトの続編「宇宙空母・ブルーノア」の主題歌。そのレコーディングがジャニーさんとの初対面でした。その後、田原俊彦の一連の楽曲を手掛けることになります。「ハッとして!Good」「ブギ浮ぎI LOVE YOU」「キミに決定!」「NINJIN娘」など、初期のシングルでタッグを組んだ作詞・作曲家の宮下智さんとはこれまで一度も会ったことがなく、最近になって初めてネットの画像で存在を確認したそう。レコード会社のディレクターが間にいたので、編曲家と作曲家が直接打ち合わせすることはありませんでした。船山・宮下コンビが手掛けた田原俊彦の楽曲は郷太さんも大好きだそうですが、「ハッとして!Good」はグレン・ミラー・オーケストラのテイストを盛り込んだアレンジで、船山さんご自身も気に入っているそうです。
休憩を挟み第二部は少年隊の話から始まりました。1985年発売のデビュー曲「仮面舞踏会」はイントロがとても印象的ですが、完成するまで何度もやり直し、かなり苦労したそう。レコーディングではSHOGUNのキーボーディスト・大谷和夫さんが手弾きしたものを何回か重ねています。郷太さん曰く、誰も聴いたことが無いようなインパクトのあるイントロという部分では、後にリリースされた1987年夏のマイケル・ジャクソンの「Bad」冒頭のオーケストラ的エフェクトと考え方がとても近く、同時代のシンクロニシティを感じるということでした。
続いては郷太さんも一番好きな曲としてよく取り上げる「ABC」の話へ。この曲では、シンセドラム(シモンズ)と生ドラム、シンセベースと手弾きのベース、シンセブラスと生ブラスというように、楽器をダブルで重ねてレコーディングしています。アイドルのレコーディング史上、使用された楽器の数が一番多かったかもとのこと。「ABC」から感じる半端ないキラキラ感とゴージャス感は、そこからきているのかもしれません。1990年発売のシングル「FUNKY FLUSHIN’」は私自身大好きな曲ですが、作曲は山下達郎、アレンジは船山さんがされています。オリジナルは1979年発売の山下達郎のアルバム「MOONGLOW」収録のものになりますが、達郎さんは船山アレンジをすごく気に入って、ラジオでも紹介したそうです。KinKi Kidsの「ジェットコースター・ロマンス」でも船山さんと達郎さんはタッグを組まれていますが、最強のコンビネーションだと思います。
その後は船山さんが近年手掛けた楽曲の話に。2018年に発売され話題になったKing & Princeの「シンデレラガール」ですが、打ち込みかと思いきや、全て生音でレコーディングされています。船山さんがメンバーの写真を見た時、ギラギラした感じではなく淡く可愛らしい印象を受けたため、柔らかでエレガントなアレンジにしたとのことでした。今の時代にアップデートされた船山さんのアレンジはとても若々しく、まるで若手作家が手掛けたよう。40年以上音楽界のトップを走り続け、常にその時代にアップデートしていく船山さんの凄さを実感しました。
Sexy ZoneやA.B.C-Zの話にもなりましたが2時間では話しきれず、第二弾を希望する声を数多く頂戴しました。船山さんが郷太さんを「ごうちゃん」と呼ぶなどイベントは終始リラックスムードで進み、お二人はすっかり仲良くなられたようでした。このイベントをきっかけに、郷太さん作曲、船山さん編曲という楽曲を聴けたら素晴らしいなと思います。